部品メーカーから自動車メーカーに転職して感じた「良かったこと」と「微妙だったこと」

自動車メーカー

おはようございました。アラレです。
文系大卒 → 独立系部品メーカー → 自動車メーカー(以下、OEM)に転職して、もう5年以上がたちました。いろいろあって複数社OEMを経験して、今は海外駐在をしています。

今日はよく聞かれる

「部品メーカーからOEMに転職して、ぶっちゃけどうだったの?」

に正直に答えていきます。

先に結論だけまとめると、

  • お金と将来の選択肢という意味では、転職して良かった
  • 仕事そのものは想像以上に縦割りで、華やかさはそんなにない
  • 周りが優秀すぎて「普通の人」はちょっとしんどい場面もある

自分へのメモもかねて、良かったことと微妙だったことを分けて書いていきます。

前提:当時のスペック

・年齢:20代後半で転職
・学歴:上位私立レベルの文系
・職歴:独立系部品メーカーで生産管理(基本的には計画担当)
・英語:読み書きそこそこ、会話は修行中
・評価:社内では「ちゃんとやっている普通〜やや良い人」くらい

いわゆるスーパーエリートではなく、

「真面目に働いてきた普通の文系が、ちょっとだけ頑張ってOEMに来た」

くらいのポジションです。

この立場から見た「OEM転職のリアル」として読んでもらえれば十分です。

OEMに転職して良かったこと①お金と“底上げされた”年収カーブ

一番分かりやすいのは、やっぱりお金です。

  • 転職初年度の年収は、部品メーカー時代からざっくり+50〜100万円アップ
    →実際の金額をぶっちゃけると400万→550万まであがりました。
  • 基本給がじわっと厚くなり、賞与が爆増
    →賞与が桁違いです。部品の頃は3ヶ月/年でした
  • 何より「昇給カーブ」が明らかに変わる
    →昇格しなくても年次昇給がしっかりしています。ありがとう組合。

特に効いたのは、

・賞与の絶対額(自動車メーカー全体で賞与は高水準)
・住宅・子ども関連などの手当
・40歳以降の年収レンジが、そこそこ具体的に想像できるようになったこと

です。

部品メーカーに残っていた場合の年収カーブをイメージで線グラフにすると、

・20代の間はそこまで差がない
・30代〜40代でじわじわ差が開いていく

こんな感じでした。たぶん弱小部品メーカーだったので差はさらに大きかったと思います。

OEMに移ったことで、

「いまの年収がドーンと増える」
「これから10〜20年の土台が一段上がった」

という感覚に近いです。

OEMに転職して良かったこと② 転職市場での“タグ”が増えた

部品メーカー出身というだけでも十分価値がありますが、
OEM経験が付くと、転職市場でのタグが一気に増えます。

・完成車側の生産管理経験あり
・サプライヤー側・OEM側の両方の事情が分かる
・海外拠点とのやり取り経験(のちのち)

こういうワードが職務経歴書に乗ってくると、

・次の転職で「OEM→別のメーカー」「OEM→サプライヤーに戻る」が選べる
・コンサル・SIer・物流系など、周辺業界からも声がかかりやすくなる

というメリットがあります。

今すぐ転職する気がなくても、

「最悪ここから出るときに、どれだけカードを持てるか」

という意味で、完成車の看板はやっぱり強いです。

OEMに転職する際にもエージェントから

今から転職する人にいうことではありませんが、OEMで3年以上働けばそこからどこにでもいけます。安心して転職できます。

といわれています。その後転職していないので真相はわかりません!

OEMに転職して良かったこと③“ものづくり全体”が少し広く見えるようになった

部品メーカー時代は、どうしても

・自社工場(海外工場)
・担当している部品
・その先の顧客

という細いラインの中で物事を見がちでした。

OEMに移ると、

・国内工場と海外工場
・完成車と主要サプライヤーとの関係
・販売側・企画側の動き

といった、「車が1台できるまで」の全体図が少しずつ見えてきます。

これは、お金には直接ならないけれど、

・自分の仕事の位置づけが分かる
・別の会社・業界に行っても、構造を理解しやすくなる

という意味で大きいです。

OEMに転職して良かったこと④周りの“プレイヤーの質”が高い

これは完全に主観ですが、

・理系・文系問わず、社員の「地頭レベル」が全体的に高い
・仕事が異様に速い人がゴロゴロいる
・現場にも“すごい人”が普通にいる

という環境でした。

もちろん「仕事しないおじさん」もいますが、それを上回るレベルで

「この人たちと毎日一緒に仕事していれば、自分も多少は鍛えられるだろうな」

と思える人材密度です。

長く働くうえで、これは地味に大事だと思います。

ここからは「微妙だったこと」

良いことだけ書いても転職サイトの体験談になってしまうので、
ここからは「正直ここは微妙だったな」という点も書いておきます。

OEMに転職して微妙だったこと①業務が想像以上に縦割りで、“守備範囲が狭くなる”

部品メーカー時代は、

・生産計画
・在庫管理
・出荷調整
・納期交渉
・トラブル対応

などを、一人でかなり幅広く持っていました。

OEMに来て最初に感じたのは、

「あ、ここまで細かく仕事が分かれているのか」

ということです。

・月の生産台数を決める人
・日次の順序を決める人
・世界全体の需給バランスを見る人
・部品サプライヤーとの制約を調整する人

同じ“生産管理”でも役割が細かく分かれていて、
自分が担当するのはその一角だけ、という構図になります。

これは、

・仕事の専門性が高まるという意味ではプラス
・「自分で全部回している感」が薄れるという意味ではマイナス

でもあります。

「自分の手の中で完結する仕事が好き」という人には、少し物足りないかもしれません。

OEMに転職して微妙だったこと②ミスったときだけ強烈に目立つ

生産管理の仕事は、基本的に

「何も起こらないことが最大の成果」

です。

・計画通り台数が出た
・大きなライン停止がなかった
・残業も許容範囲内で収まった

こういう日は、誰にも褒められません。
「今日も無事に終わりましたね」で終わりです。

逆に、

・台数の計算ミス
・部品制約の見落とし
・工事や品質イベントの前提を誤解したまま計画を組んだ

みたいなミスをすると、

ラインが止まる
→ 数百人が手待ちになる
→ 報告会と再発防止策の地獄ラウンド

が始まります。

・平常運転:空気
・ミスったとき:強烈に目立つ

こういう仕事なので、「褒められて伸びるタイプ」には正直つらいです。

OEMに転職して微妙だったこと③社内政治・調整力の比重が上がる

部品メーカー時代ももちろん調整はしていましたが、
OEMに来ると「調整」の比重がさらに上がります。

・販売「もっと台数を増やしたい」
・生産「これ以上は物理的に無理」
・調達「この部品が足りない」
・品質「検査を増やしたいから、その日は台数を絞ってほしい」

こういう利害の違う人たちの間に立って、

・一番マシな案を作る
・説明して、納得してもらう
・「ここまではやります」「ここから先は無理」を線引きする

という仕事が増えていきます。

数字だけいじっていれば済むわけではなく、
結局は「人」と「組織」を相手にする仕事です。

人と話すのが好きな人には向いていますが、

「静かにモニターだけ見ていたいです」

タイプには、ちょっと疲れるかもしれません。

OEMに転職して微妙だったこと④仕事の“楽しさ”と年収がきれいに比例しない

これはどこの会社でもそうですが、特に大企業は顕著です。

・めちゃくちゃやりがいがあって楽しい仕事だけが、高年収ではない
・逆に「淡々とした調整業務」なのに、年収だけはそこそこ高い仕事もある

OEMの生産管理は、どちらかというと後者寄りです。

・ドラマチックに楽しい日が連続する仕事ではない
・ただし会社全体の数字を動かしているという意味での責任感はある
・そして給料はちゃんと出る

なので、

「毎日ワクワクしたい」「仕事が趣味です」

という方よりは、

「仕事は生活の土台。ほどほどに頑張りつつ、プライベートも大事にしたい」

くらいの価値観の人に、フィットするポジションだと思います。

OEMに転職して微妙だったこと⑤周りが優秀すぎて、普通の人はちょっとしんどい

良かったこと④で「プレイヤーの質が高い」と書きましたが、
これは同時にデメリットにもなります。

・資料作成のスピードと質がバグっている人が普通にいる
・数字の読み方、ロジックの組み立て方が妙に洗練されている
・日本語(メール・議事録)のレベルも地味に高い

こういう環境に放り込まれると、最初のうちは

「自分だけ頭悪いのでは?」

みたいな気持ちになりがちです。

実際には、

・みんな得意分野が違うだけ
・自分も別のところではちゃんと価値を出している

のですが、周りが優秀だと「平均ライン」が高く見えてしまいます。

ここで必要なのは、

・比べる相手を“同じ部署の一番すごい人”に固定しないこと
・「自分はこの領域で戦う」と腹をくくること

だと思います。

優秀な人が多いのはメリットでもあり、
「永遠に自分が平均点」に感じやすいという意味でデメリットでもあります。

どんな人に向いていて、どんな人には向かないか

ざっくりですが、こんな感じです。

向いている人

・安定した年収と福利厚生を重視したい
・ものづくりの現場と数字の両方が好き
・コツコツ改善・調整するのが苦にならない
・「自分が目立つ」より「全体が回るほうが気持ちいい」タイプ
・周りが優秀でも、淡々とマイペースに積み上げられる人

向いていないかもしれない人

・自分のアイデアで新規事業をガンガン作りたい
・毎日新しいことに挑戦していたい
・承認欲求が強めで、成果がダイレクトに見える仕事じゃないとつらい
・周りと比べて落ち込むタイプで、競争環境がストレスになる人

もちろん部署によって違いますが、
生産管理・調達・物流あたりはだいたいこういう傾向です。

まとめ:ドラマは少ないけれど“生活の土台”としては悪くない

部品メーカーからOEMに転職して、良かったこと・微妙だったことを並べてきました。

・年収カーブと福利厚生は明らかに良くなった
・ものづくり全体の構造が少し広く見えるようになった
・将来の選択肢を増やす意味でもプラスだった

一方で、

・仕事は想像以上に縦割り
・ミスったときだけ強烈に目立つ
・周りが優秀すぎて、普通の人はずっと「まあまあポジション」になりがち

という現実もあります。

華やかなサクセスストーリーではなく、

「静かに仕事をこなしながら、じわじわ生活の土台を強くしていく」

そんなキャリアに魅力を感じるかどうか。

それが、文系がOEMに転職するかどうかを決める一番のポイントかもしれません。

この記事が、
「部品メーカーからOEMに行ってみようかな」と考えている人の
イメージ作りの材料になればうれしいです。

実際のわたしが転職したときのお話は下にまとめています。

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